「相続税申告」に関するお役立ち情報
相続税の申告期限の延長
1 相続税申告の申告期限はいつか
亡くなった方の相続財産の金額によっては、相続税が発生する場合があります。
基礎控除額を超える相続財産がある場合は、原則として相続税の申告と納税が必要になります。
相続税の申告と納税には、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内という期限があります。
申告だけではなく、納税も含めて10か月以内に行わなければならないのが原則です。
ただし、申告期限にあたる日が土日祝日の場合は、これらの日の翌日が申告期限になります。
2 特殊なケースにおける申告期限
⑴ 相続人が相続発生の事実を知らなかった場合
生前の被相続人と相続人の間にまったく親交が無かったなどの事情がある場合には、相続人が相続開始日、つまり被相続人が亡くなった日を知らないというケースもあると思われます。
その場合は、相続発生の事実を知った日から10か月後が、相続税の申告期限になります。
つまり、相続税の申告期限は、相続人の認識によって相対的に決まるということになります。
⑵ 被相続人が死亡した日を特定できない場合
一人暮らしの方が自宅で亡くなったケースのように、医療機関以外で最期を迎えた場合、亡くなった日を特定することが難しいことがあります。
このような場合、戸籍謄本には、死亡日が「令和5年1月10日頃から15日までの間」のように記載されることがあります。
そうすると、亡くなった日をピンポイントで特定することができないため、記載されている期間の最終日を相続開始日とみなして申告期限が設定されます。
上記の例では、令和5年1月15日が相続発生日となり、申告期限は令和5年11月15日となります。
⑶ 被相続人に続いてその相続人も亡くなった場合
被相続人が亡くなった後に、その被相続人の相続税申告期間中に、この被相続人の相続人が相次いで亡くなった場合は、申告期限が異なります。
「被相続人の相続人」が亡くなった場合、「被相続人の相続人」の相続人が、被相続人と「被相続人の相続人」の分の相続税の申告を行わなければなりません。
この場合の申告期限は、「被相続人の相続人」が亡くなってから10か月以内になります。
つまり、被相続人の相続税申告期限が、「被相続人の相続人」の相続税申告期限まで延長されることになります。
ただし、被相続人に配偶者などの他の相続人がいる場合、「被相続人の相続人」の申告期限は延長の対象にならないので注意が必要です。
⑷ 遺贈を受けた場合
被相続人から相続人以外の方に遺贈された場合、受遺者は相続が発生した時点で、自分が相続財産をもらえるかどうかを知ることができません。
受遺者は、被相続人が遺した遺言書の存在を知り、その内容を確認して初めて自分が受遺者であることが分かるからです。
この場合、受遺者が、被相続人の遺言で自分に相続財産が遺贈されると分かった日の翌日から10か月後が相続税の申告期限になります。
3 相続税の申告期限を過ぎてしまった場合のデメリット
相続税の申告期限を過ぎてしまうと様々なデメリットがあります。
相続税の軽減ができる特例が使えなくなるおそれがありますし、加算税や延滞税等のペナルティが課されるリスクがあります。
4 相続税の申告期限を延長できるか
相続税の申告期限の延長はできないのが原則です。
しかし、準備に取り掛かるのが遅くなり申告書の作成が間に合わない場合や、相続人間で揉めてしまい申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合など、申告期限に間に合わない状況が生まれるケースも少なくないと考えられます。
相続税申告の準備は、とにかく早めに進めることが最も重要ですが、ご事情によってはそれが難しいこともあるかもしれません。
そのような場合は、とにかく1回目の当初申告が期限内に間に合うように、相続税の概算額を申告して多めに相続税を支払っておくのが良いでしょう。
遺産分割協議がまとまらない場合については、未分割申告をして、申告書に3年内の分割見込書を添付しておくことになります。
申告書に3年内の分割見込書を添付しておくことで、申告期限から3年以内に遺産分割協議がまとまった場合、修正申告をする際に、小規模宅地の特例や配偶者の税額軽減といった相続税額を軽減できる特例を適用することが可能になります。